学生の頃からガラスと飴の素材は似ている部分が多くあると感じていて、ガラスを学んだ経験を活かして大好きな飴で自分なりの制作をしたいと思っています。普段作っている日本伝統飴細工とはまた違った角度から私が感じている飴の魅力をかたちにしました。
「オブジェ」と「お菓子」。両方の要素を持ったものなので、どちらも楽しんでもらえたらと思います。
ロリポップ
手で持って舐めやすいようになっている棒付き飴。
見た目にも棒があることの意義があったらいいなと思い、棒も含めて1つのかたちにしました。
グラスキャンディ
ガラスをイメージした飴。
制作方法もガラス技法と同じ工程をふみ、光の屈折や光をためこむ透明な素材ならではの魅力を表現しました。
ミクストメディアキャンディ
ミクストメディアとは……いくつかの異素材を組みあわせること。
ガラスは扱い方や加工技法によってさまざまな見えかたをします。ガラスに対して透明でキラキラしたイメージが強かった私ですが、実際に学生時代に触れてみて全く違う質感、例えば石、水、陶、金属、綿などに見えることに驚きと魅力を感じました。
この時に感じたおもしろさを、今なら飴でも表現できるかもしれないと思いました。
私が飴という素材に感じている最大の魅力は同じ材料から生まれるさまざまな質感の表現の可能性です。ここでは同じ素材でありながら異素材の質感を作り出すことをテーマにしています。
お菓子であること
オブジェでありながら食品であることを考えると、やっぱり最後は食べてほしいと思います。
そんな気持ちを込めてそれぞれの飴に味や香りをつけました。
いつかは形がなくなってしまうものだからこそ、時間が経って溶けるまでは側に置いて楽しんでもらえたら。
壊れるでも捨てるでもない。食べて手元からなくなるということは最高の終わり方だと私は考えます。
そして形がなくなったあと、少しでも記憶に残ってくれれば嬉しいです。
(文・加藤妹子)
Maiko Kato Candy works
日本伝統飴細工専門店「あめ細工吉原」飴細工師・加藤妹子による個人制作。日本伝統飴細工の枠をこえて洋菓子飴細工や工芸ガラス技法も取り入れ、砂糖と水飴から作られる「飴」という素材から生まれる様々な質感の違いをテーマに制作している。
加藤妹子 (Maiko Kato )
1983年 東京都に生まれる。
子ども時代より「食べること」「ものづくり」に関心を示す。
おやつに自作のべっこう飴を作ったことがきっかけで、漠然と飴とガラスは似ていると感じる。
美術大学在籍時にガラス造形を専攻し、ガラスと飴の共通点を実感する。
お菓子としてだけでなく造形素材としても飴に魅力を感じ、ガラス技法を活かして飴に関わる仕事がしたいと決心する。
2008年 多摩美術大学 美術学部 工芸学科ガラス専攻 卒業
2009年 「あめ細工吉原」吉原孝洋氏に師事。飴細工師の道に入る。
2012年 株式会社あめ細工吉原設立と共に入社。商品企画、デザインを担当。